明方4時に目が覚めて
湯を沸かしてた
体を水の中に沈めて
Oの口をして声を吐いて息をした
電気が落ちた
浴室は薄靄のなかにあった
うす緑の湯船に、屈折して伸びる手脚が揺れていた
私はここにあった
牛乳石鹸の匂いが全身につく
いつもと同じぐらいでも丁寧に洗った
溜めているお湯の量を気にした
まだたくさんあった
体を水の中に沈めた
さっきより少し明るい気がした
ドアを開けるとここより暗くて
鏡に自分の影だけが映った
うねる髪は量が多い
首は意外と細くて、肩は丸くて小さい
正面から見ると子供のころと変わらない
右に向くと胸がふくらんでいた
私が頼れるのは時間と指先だけになった
化粧水があと4回分ぐらい
排水溝の流れる音に知覚をあずけて
垂らした油はいつもより多かった
少しだけ余った液体は、ちゃんと他の場所へ届けられることが
自然とあたりまえに、わかった
私は今日の朝これを知るために
3月3日の6時44分
日常がそれぞれにあって、或る場所で交差する。そうするとほかの柱が建ち、別の場所の木に陽が差す。
事情は皆抱えているけれど、此処にいて目の前にある。
それだけのことなんだ、と思いました。