あれは少し高い位置の花の先にとまり、可憐に蜜を吸っては舞う健気な薫りを漂わせる存在だと、人は勘違いしている。私の目の前にいる一羽の蝶は地べたを脚で一歩ずつ這っている。花もない場所で夢中になって向かっている。羽はぱた、ぱたと開閉する。読みかけの本が視界の手前ではためく。位置に身体を澄ませても、奥行きとは姿を捉われない。規則性のなかに曖昧さを差し込んで掴ませない。私はなにものなのかを知らない。きみの底をたたくと意外な音がすることを知らない。力を込めて土に差し込まれる胴部の先に命の続きがある
10/10/2023 わからないことのなかで生きる